RIVALS EYE【第二節:カムパネルラ】

2024年05月02日

RIVALS EYEとは

ライバル達が熱いホンネをぶつけ合う

30リーグ2024参加団体による公式戦の観戦レポートです

今回は第二節『演劇集団シアターライズ×21世紀のキリン』を

カムパネルラがレポート

はたしてライバルはこの試合をどう観たのか?

演劇集団シアターライズ様「Last.Last..Last...」

•題材、テーマが好きな類いで楽しみにしておりました。

•ライトカットインで始まる作品は伝えたいであろう事以上にその驚きが多く勝ってしまいました。その後OPらしきシーンに至る迄の展開が「早い」。僕の場合好きなジャンルであるこの作品は「A」を軸に作品を見れば楽しみが増えるだろうなと始まりから感じました。然しAに目を合わせるには「早い」事が障害となりもどかしさを感じました。Aが慌てる状況のなかで場面への眼差しが「速まる」のは当然でしたから、何処か一つ「ゆっくり」とAに標準を合わせる事が出来る表現が有れば今作の展開以上にのめり込めたように思います。

•OPらしきシーンの表現が好きです。「個」の色が重なり雨上がりの街に浮かぶ虹のような味わいを作品に予感させます。登場人物の動き、セリフの展開、音楽が良かったです。ただ照明の表現に勿体なさを覚えました。「見えない」部分を増やし、ドキッとさせた方が今回の作品がもつ深みの部分に着目出来たように思います。

•夢か現実か微睡む電車内のシーンは登場人物各々の役割が好きな類いで楽しめました。椅子、人物、照明の効果で電車内に見えました。役者それぞれの熱量が目に見えました。

•「曖昧な」セリフが多かったです。それを如何に咀嚼するかが作品の分水嶺のように展開します。僕は把握出来ませんでした。把握したかった。好きな人もいると思います。この拘りは大切だと思います。

•効果音で流れる音の感じが自分には新しい類いで勉強になりました。

•銀河鉄道の夜的な夢と現実の境が曖昧な電車モノは主軸となる役と眼差しを共に出来るかが鍵となる(思い出すのは手塚治虫先生のブラックジャック「人生という名のSL」、重松清先生の「流星ワゴン」)。
他の登場人物と比較した際にAが突出して目立っていたかというとそうではなかった。派手さも地味さも欠けた造形に思えた。彼の家庭の事情は語られるのであるが他と変わらない。生き物として「特別な」理由はなかった。
他との変わらなさを演出したように思えた。それが良さだと思う。

•自分の場合観劇中に要素を溢してしまう事が多々あるのですが(大切なセリフを聴き取れずちんぷんかんぷんなど)、溢しても他の要素、セリフの展開から大体の枠組みを想像して物語を楽しんだり、楽しめたりします。然し今作の場合、枠組み、熱量、アイテムは用意されてはいたのですがどれも決定的に核を揺らす迄に至ったとはいえずすんなりと進んでいったように感じられました(枠組み=現世→異世界→現世というルートでAが出逢っていくセリフ、登場人物の出てくる順番はスマートで感情移入しやすい作り込みだった。)
(熱量=電車内で出逢う二組のカップル、現世で出会う駅員などAの周りに現れる登場人物たちは自己を持ち合わせて言葉を紡いでいた。他者を見届けていくAの心境に変化をもたらして物語に意味を創るには充分だ。)
(アテンダント?が授けてくれた飲み物や巻物、手紙。アイテムを通して物事が変化する事が明確だなと感じた)

全体的にスマートに部分的にユーモアを込めて進行する作風を感じましたから、その中でも何処か一つ決定的に溢れてどうしようもないような描写を更に作り込んでいたら、また違う観劇体験になるだろうなと思う次第です。

•シーン中に登場する人物の動き、感情が浮いているように見える感じが何度かあった。登場するまでと登場に至る経緯の導線に何処まで意識を張り巡らしていたか。
意図的な部分も含まれていたかに思われるが、その感覚を劇的に消化するにはもうひと工夫必要な気がした。

•役者一人一人全員に対し物足りなさを感じた。その姿、お芝居から感じる気迫を思えば何かもう少しくらいたい、くらえる大きさを感じるが、貰えない。もどかしい。出演シーン、見せ場は確実に用意されて、いいお芝居を皆さんされているのに。消化不良。もっと魅せられたのではないかという期待がありました。パワーやバックボーンがその力通りに演技に出力していなかったのではないか。もったいないなと感じた。もっと観たかった。心を震わせたかった。

総評
作品のテーマ、構成が好きです。
銀河鉄道の夜的な、そういった表現が好きです。
登場人物に「特別」な立場を擁する人物がいませんでした。みんな違いますが、みんな生きている。それを思わせる物語、座組。コレが演劇集団シアターライズ様の特性なのかも。ソレが面白い。
登場人物個人個人に対して想いを寄せやすい造形でした。どの登場人物も深く愛する事が出来るなって。
台詞の「曖昧さ」は僕には合わない類いでしたが、其処が良さだと思います。
欲を言えば点が線となる要素がもう少し欲しかった。
自分の場合、アバンの演出が違っていたなら、観劇の熱量は今回の上演よりも上がっていた。
好きなジャンルだった作品のため、構造事態で驚きはなく、人物設定、言葉、思考も他作品と比較した際に「驚き」はなかった。その「驚き」がない所に団体としての作品の良さが有ると感じた。ストレスなく登場人物に想いを寄せて、言葉を吸収出来るから。
本当に個々人の想い、熱があるなと思いました。その部分が劇的に消化出来得るポイントだと。
ただ観客が大向こうで唸り消化するにはコチラがかなり想像を補填しないと成り立たないように思いました。消化する為の器がもう少しどの場面、登場人物に対しても欲しい。脚本•演出、或いは構成を調整するのか。少なくとも良いなと思いながらそれで留まり、観劇終わりには消化不良です。
団体としての拘りを護りながら、面白い部分が尚面白く見えるように表現すればこのままでも充分に一気に化けるのではないかと期待感があります。その舞台を作品を次作品で目にしたい想いです。劇的に感動したい。感無量で拍手したい。
「やりたいこと」が目に見えるから、「やりたいこと」が伝わるような道を客席まで更に繋げて欲しい。或いは伝えて欲しいと思いました。
演劇には3の法則があると勝手に思っているのですが(3作品目で大体跳ねる)。シアターライズ様は次が団体として3作品目のよう。
次が楽しみですね。


21世紀のキリン様「PINK」

•良かった。面白かった。

脚本•演出•役者。総てが良かった。

•梶井基次郎の『桜の樹の下には』がオマージュの時点で目を惹く。脚本の言葉に対する美意識が高く、良い。どういった理由で発せられるのか興味を惹く類い。

•転換時に演出家さんらしき人が桜を蒔いた。その行為にこの作品への覚悟が見えた。

•ラインインまでの音、期待。ライトインで目に浮かぶ映像。興味を引く。

•演出がよかった。例えば照明。もう少し暗さが欲しいと思ったが、そうするとアバンギャルドさ、アングラ味が強く過激さがましていたように思う。そうすれば不気味さを抱えたこの作品と相性が悪い人には堪らないと思う。だから明るくてよかった。
そういった配慮が有って選ぶ力があると分かるのはサス芝居のシーン。サスとなるシーンへの導入、終わりが話しとみっちり噛み合っており、深く見入るきっかけとなった。脚本、役者が保つポテンシャルと相談しながら、出来る限り沢山のお客様に届けられるように計算されて創られたように思った。

•男の造形が良い。行動、メイクを見ると異質な存在で有るが発声•挙動を見ると物足りない。物足りなさが必要だった。彼に求めた異常性は少年、カリスマ性は女が担保していたように思えた。正常な立場で作品を見渡す勇気をくれる役だったように思える。

•少年の造形が良い。髪型、衣装、所作から美意識を感じる。彼の告白のシーンでこの作品は特異的な作品で有ると確信した。感情の吐露、目配せ、肩の使い方。目を惹いた。•女の造形が良い。倒れている姿だけで絵となった。設定、言葉だけで収まる事のない人物に対する説得力があった。発せられる言葉に深いアイデンティティを感じた。身体表現が素晴らしく、桜を体現する動きは何度も目にしたい。

•男が少年に腕を与えるシーンが素晴らしい。何の為に生きるのか。どのようにして生きていくのか。死ぬ理由を抱えて、他者に身を預けられるほど不幸中の幸いはない。素晴らしく、美しく思った。

総評
作•演出•キャストの3軸が美しく、素晴らしい。
『死』が絡む古典を取り入れた作品。こういった作品が好きな人に対して同世代だけでなく年代を越えて受け入れられる力を感じました。
あちらが立たなければこちらを立てればいい。そういった心配りのされた作品であったように思います。
傑作。
喝采!


総評

2ステージ目を客席上手最後方から拝見致しました。
角度は違えど何方の作品も面白い。深入りや目を背ける世界が描かれていた。
何方も好きなジャンル。はじめて見る団体。
作品で評価する。作品の出来栄え。
好きなポイント、そうではないポイントを抱えて両作品は進行する。大きなミスもない。かといって勝敗を決するほどの決め手にも欠ける。困ったなぁ。甲乙つけ難いのではないか。何方かに票を入れたいけど、このままでは。そう思っていた。
然し「PINK」の少年の告白が流れを変えた。作品が保つポテンシャルを演技で発揮していた。コレを見て、僕は何方に投票するかを決めた。その後の三人のキャストによる芝居も良かった。
決め手は作品のポテンシャルを団体が如何に発揮したか否かという観点。
演劇集団シアターライズ様は熱が目に浮かびながら、更に加熱し渦を巻く段階に至っていなかったように思われる。一言で言うともどかしかった。まだまだ劇への熱が作品の花を咲かせるポテンシャルを団体から感じる。
かたや21世紀のキリン様は各部門のポテンシャルをうまく配置して、作品をそつなく表現して、やりたい事をやりました感を強く思わせる。今回の舞台にこれ以上はないという説得力があった。傑作だった。
まだまだ面白くなるぞと予感を感じさせる団体、この座組で可能な最高を果たしたとも言える団体とを比較したときに僕は後者、21世紀のキリン様に投票させていただきました。
どちら様の団体にもそれぞれの良さがあり、その良さを見比べたときに大差はなく微差の決闘で勝敗は決したのではないかな?と想像します。
非常にレベルが高く、見応えのある演劇バトルでした。いい芝居をありがとうございました。
両団体の次の作品も楽しみです。

容原静(カムパネルラ)

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